MR. TAMBOURINE MAN
Byrdsは60年代中期のアメリカン・ロック・シーンを代表するバンドである。しかし現代の若手ガレージ・ファンの間では「Mr. Tambourine
Man」のコーラス部分(どこかのメーカーのCM)をそれと分かって聞いたという程度でさえ大変な博学、同じバーズでもRon WoodのBirdsの方が有名なくらいとは、驚きとともに隔世の感がある。最近では各アルバムが紙ジャケでリリースされたり、ボックス・セットが出たりと露出度が高いのだが、フォーク・ロックが懐かしい団塊の大人買いに過ぎないのか、若者にそっぽを向かれているようだ。紙ジャケがそんなに嬉しいか。こんな後ろ向きの商売しか出来ないのか。団塊ぜんぜんダメじゃん。Byrdsは絶滅危惧種か。…う〜ん危惧種か、悩みは深い。Byrdsといえばカントリー・ロック草創期のビッグ・ネームとして揺るぎない地位を保ち、世代を超えて愛されるバンドと思われたのだが…。
ByrdsやEaglesに代表される60〜70年代のカントリー/フォーク・ロックはその穏当で健全な音楽性が広く受け入れられ、現在ではイージー・リスニング的に巷に溢れる普遍的音楽スタイルになっている。フォロワーが生まれやすい口当たりの良さが裾野を広げはしたが、、本家本元を主張するべきエキサイティングな局面には欠けていたということだろうか、個性を残せなかったバンドが忘れられて行くのは仕方の無いことだが、そのエポックメーキングな存在感は記憶されるべきであろうし、何よりも今なお色褪せぬ才能のきらめきを若い人々にちょっとだけでも聞いてみて欲しいのだ。
おじさん集ぷんぷんでイヤかも知れないが、60年代中期にリリースされたアルバムを紹介してみたい。
まず最初は取り上げるのも大赤面、デビュー作の「Mr. Tambourine Man」である。発売は1965年。ブリテイッシュ・インベイジョンがアメリカで旋風を起こし始めたころである。Byrdsもその影響をもろに受けたバンドであるが、フォーク畑出身の彼らは無批判にブリティッシュ・ビートをコピーすることを潔しとせず、アメリカ伝統のサウンドを融合させた独自の世界を作りだした。俗に言うフォーク・ロックである。
同時期Byrds以外にも同じ試みにトライしたバンドもいたので専売特許という訳ではないが、タイトル曲が大ヒットしたおかげで、今日ではフォーク・ロックといえばByrdsという図式が出来ている。しかしガレージ的に彼らの一番の魅力はといえば、後に全米のティーン・バンドがこぞってカバーした「I'll
Feel A Whole Lotta Better」であろう。これはGene Clarkの手になるビート・ナンバーで日本題は「すっきりしたぜ」。内容もClarkのクールなボーカルと軽快なギター・サウンドをフューチャーしたアップテンポのナンバーで、タイトル通り気分がすかっとする作品だ。演奏もさほど難しくなさそうなので、多くのカバー・バージョンが生まれたのも納得出来る。Clarkはこれも含め単独作品を4曲、2曲をRoger
McGuineと共作しており、Rogerと並び貢献度大の存在であった。ちょっと暗めで哀愁漂うボーカルはいつ聞いてもヒトの心の琴線に遠慮なく触れてくるし、ソングライターとしての感性も天才的であった。まあDylanのカバーも良いがGene
Clarkがいなかったら、かなり寂しいのは事実だ。Chris Hillmanは相当なイケメンであったが、この時点でまだ実力的には物足りないのだ。
とりあえあず本作を買ったら即Clarkの曲を聞いて欲しい。マイナー・キー・スタイルのガレージが好きな方なら必ずはまるであろう。他にもJackie
De Shannonの「Don't Doubt Yourself, Babe」はボー・ビートのナンバーでこれもかなり良い出来だ。マニアに噴販ものの解説だが、これは皆様を対象にした文章ではありませんので、悪しからず。(Y)